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2017年5月13日 (土)

これから

前回、軽井沢論をやるぞ、的なことを書いたが、これから現地調査をして書くつもりである。もともと僕は軽井沢が苦手である。僕の印象としては、夏の軽井沢の印象が主なのだが、なんか異常に人が多い。それから、物の値段が異常に高い。なんかラーメン一杯1500円、みたいな。それにせっかく地方を訪ねているのに、その地方らしさをあらわすものがほとんどない。僕が地方を訪ねると、まず期待するのは、神社仏閣、辻の小祠小堂。田んぼの中を緩やかにカーブして集落に続く道。ちょっとした木陰。山裾の道のおだやかな佇まい。こういったものだ。もちろん軽井沢にもなくはない。例えば旧碓氷峠の峠の熊野神社とか、中軽井沢駅にほどちかい、相撲の土俵が設けられた長倉神社の境内とか。でも、軽井沢にくる人はそんなものに興味があるのではない。人々は「高原の爽やかな空気」の中で、散策したり、サイクリングしたり、テニスしたりするらしい。そして、ショー記念礼拝堂を見たり、「茜屋」でコーヒーを飲んだりするらしい。
ちょっと待って。僕はワンゲル・ハイキング・山岳部などのキャリアが長くて、高地といえばやっぱ2500メートルから3000メートルのイメージしかない。だいたいが軽井沢ではほぼ車の渋滞がいたるところにあり、爽やかな空気どころではない。僕は自転車歴も長いので、ママチャリで「サイクリング」のイメージはない。クリスチャンでもないのに、何を好き好んで特に壮麗豪華でもない教会に行くのか?、さっぱり理解できない。そして物価が高い。人が多い。ようするに、ナンモ良いことないじゃん!

そんな理由で、ずーっと「軽井沢」を拒否し続けてきた。

ところがごく最近、ものの見方を変えたら、急に軽井沢を理解し始めたのだ。

いまでは言えなくもないね、「軽井沢って良いところだナア!」みたいなこと。


軽井沢は日本の避暑地の中で、もっとも高いブランド価値を獲得した場所だってこと。そのばしょが涼しいとか、便利だとか、景色が良いとか、そういった機能的な価値に還元することのできない、プラスアルファの、「ブランド価値」としかいえないものを軽井沢という場所は獲得しているのよ。
そしてそういう場所のオーラを、伝統的な genius loci から受け取るのではなくて、歴史的には100年程度の「近代」の人為的な努力というか、日本の支配階級の生活様式の中から自然に積み上げてきたことが軽井沢の最大の特徴なんだってこと。もちろん自然のもたらす圧倒的な剰余価値を、浅間山から受け取っていることはもちろんだけど、極論すると、人々は浅間山を眺めたり登ったりするために軽井沢にくるわけではない。

軽井沢に集まった「文人」は軽井沢ブランドを生みだす、宣伝隊、イデオローグであって、protagonist ではない。 主役は「日本の近代」そのものなのだ。

明治以降の歴史の中で「支配階級」になった人々のコロニーとして軽井沢は建設された。皇族・貴族だけではない。政治家、産業界の成功者、そして文人・芸術家。軽井沢の開発から利益を得ようとする鉄道会社、不動産会社。そうした人々の思惑や情念が、結果として「軽井沢」というブランドを生み出した。驚くべきことに、その自己生成メカニズムは現在なお進行中である。つまり、「軽井沢」というブランドは現在なお生成中であること、人々の欲望や消費、情念を飲み込みながら、生成する、つまり「生きている」ということなのだ。

そのことがわかると、「軽井沢」は、がぜん面白くなった。ひとつひとつの地名や道路の名前にも「近代」が刻まれて「作品化」している。本当なら「物象化している」といいたいところだが、徒らに議論を難しくしないために、あえて「作品化」と呼ぶことにする。そのみごとさについてはまた後にみてみたい。

いずれにせよ、休日の午後、万平ホテルのテラスのティータイムも、ただの「お茶を飲む」行為なのではなく、あるひとにとってはジョンレノンの身振りのミメーシスであったりという形で、ひとつの作品形成行為となっていくのである。「お茶を飲む」という行為を通じて自らが「軽井沢」というブランドを作っていくことに関わるのである。

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