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2017年5月26日 (金)

ヴェルフリ展のあと(前回の続き)

前回の最初のところで見ておいたように、アウトサイダーアートというのは英訳の際に造られた言葉で、もとはフランス語の アールブリュットart brut だってことだったね。そしてそれは20世紀の始め頃に起こった絵画の革新運動のひとつであるということ。

その後今日に至るまでの100年の間に絵画とかアートをめぐる状況は大きく変わった。先般亡くなったアメリカの哲学者、 アーサー・C・ダントーはウォーホールをはじめポップアートを取り上げながら、ルネッサンスから始まりヨーロッパのアートワールドを作り上げてきた大きな歴史的境界線が踏み越えられてきたことを論じていたように思う。簡単に言っちゃうと、いまや「これがアートだ!」と言えば何でもアートだという世の中になったっていうこと。そういう意味でいくと「アウトサイダーアート」という言葉は、歴史的には意味があるけど、ソトとウチの区別が曖昧になった現在のアートワールドから考えると自己矛盾をおこすことにもなりかねないね。

まあ、いろいろむずかしい議論をするつもりはないんだけど、パラレルヴィジョンの図録のなかのシュヴァルの「理想宮」の写真をみていて、僕としては日本の仏教美術に関連してイメージが湧いたんで、そのことを書こうとしている。


長野県上田市の西の方角に修那羅峠(読みはショナラまたはシュナラだと思う)って場所があるんだけど、人里を離れた峠の傍らにある神社、安宮神社の境内に、石仏がたくさん祀られている。案内によると、石神、石仏、木造仏あわせて1128社が末社として境内に祀られているそうだ。今となっては風化して細かい造形の定かでないものも多数あり、どれをとってもプロの石工や仏師によらない素朴で特異な表現の像である。
訪う人も稀なひっそりとした山の中に多数の石仏が並んでいるのをみると、ちょっとびっくりする。その一方で、こういう「マッス」をうみだす情熱のみたいなものが、どこから来たのか気になりもする。僕がそこを訪れたのは10年くらい前なんだけど、なんか心のどこかにその謎めいた雰囲気がひっかかっていた。今回、ヴェルフリの展覧会について書こうとして急につぎのようなアイデアのイメージが浮かんだのよ。
つまり、
「仏師や石工を仏像の造立のインサイダーだとすると、こうした素朴な仏像は、まさに「アウトサイダー」の作品じゃないか! これこそ日本流アウトサイダーアートだあ!」、とか。

ところで今、神社のある長野県筑北村の案内HPを見たら、これは一人の作者によるものではなく、信者の人が奉納したものなんだってね。今日このブログを書きはじめるまでは、なんとなく仏像の作者は一人なのかな、と思っていたので、シュヴァルのようなアールブリュットの作家たちと同じように、とどめることのできない個人の情熱が生み出したものだと思って、イメージが湧いたんだけど、どうもそうじゃないらしい。残念!

よく考えてみると、一人の作家によるものではない、自然発生的で大勢が作るこういう素朴な表現の集積は、神社仏閣、宗教施設にけっこうみられるのかもしれないね。化野念仏寺の水子供養とか、京都伏見稲荷の奉納鳥居とか、伊勢朝熊山の碑とか、神社の奉納額とか。

マルセイユの港を見下ろす聖母教会にも、船乗りが海での安全や守護を祈念する奉納額が沢山あったもんなあ。
信仰に関連する素朴な表現、僕はけっこう好きですね。

というわけで、今日はこれまで。あまり中身がないブログになってしまってゴメンなチャイ!

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