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2017年6月 7日 (水)

オレのサードプレイス?

昨日オルデンバーグの『サードプレイス』読んだ。
副題には、「コミュニティの核になるとびきり居心地のよい場所」、とある。(忠平美幸訳みすゞ、2013)
著者のオルデンバーグは1932年うまれとあるから、けっこう年配の人だな。   
THE GREAT GOOD PLACE :  Cafes, Coffee Shops, Bookstores, Bars, Hair Salons and Other Hangouts at the Heart of a Community   /  Mass.1989.

この著者が嘆いているアメリカの現状ってすごいよくわかるわ。モータリゼーションがその大きな背景だけど、それだけでなくて都市の肥大化なんかも関係あると思う。

本の内容は説明しないよ。簡単にいっておくと、サードプレイス、ってのは家庭でも職場でもない場所。インフォーマルな公共生活の行われる場所で、活動拠点Forcal point であったり、中核的環境 Core setting であるような場所。そこに集まってくる人は対等な関係(職場の立場とか社会的地位とかと関係なくて)、そこでは むだ話(会話)が主な活動。コンビニエントで時に常連の人もいたり。あんまり目立たなくて地味な場所。そういう場所って必要だよね?
で、昔から人類はそういう場所を大事にしてきたんだな。都市の文化はそういうな所から生まれてきた。コミュニティってのは元来そういうものを持ってる場所なんだな。ヨーロッパの街に行けばおっさんたちが街の中心の広場に近いカフェやビストロでなんとなく遊んだりタバコ吸ったりしてる。トルコだったら紅茶飲んでる。中国いくと屋外の木陰でお茶飲みながら麻雀やってたりとか。
このごろのメガロシティではそういう場所はどんどんなくなりつつある。

で、この本はアメリカでそういう場所が減ってきたことを問題にしてるんだ。僕としては、著者にすごく共感できる。ただ、僕がもっと重大だと思うことはある。どういうことか、というと、サードプレイスの消失は、単に物理的な空間の喪失ということではなくて、人間の心性というか、モラルの変化と関係がある、ということだ。

この本のタイトルが示している「インフォーマル」かつ「公共的」な次元そのものを、現代の薄っぺらい人間は「理解」することができないと考えられる。あれか、これかの一次元的な思考しか許さない心性のもとでは、「公共領域」はフォーマルであって、一方「私的領域」はインフォーマルである以上にプライヴェートな秘匿空間である、という風にしか捉えられないというのが、今日の趨勢ではないかと思っている。僕自身はそういう考え方も嫌いだし、そのような社会は望ましい社会ではない、と思っているけど、現実はますますそういう風な方向にむいているように思う。

僕としては、固定した場所としてのサードプレイスというよりも、「ココロの中に」サードプレイスを育てたい。
職場の会話が「仕事の話」か「家庭の話」しかない職場はなんだか寂しい。「ココロのサードプレイス」がある人たちの職場なら、かならずや空き時間の会話の質も変わってくるだろう。そういう職場は創造性があるんじゃないかと思う。僕の勤めていた場所も30年くらい前はそんな風だったんじゃないかと思う。
見方を変えよう。ココロにサードプレイスを持つ人が集まる職場には、「魅力のある人間がいる」。仕事の能力に還元できない、別の能力を互いに尊重する。『釣りバカ日誌』の「ハマちゃん」だ。もっともハマちゃんと偉い人は「釣り船」という立派なサードプレイスを共有しているのだが。
まあ、「地位のあるひと」やら「学歴がよくて頭のいい人」とかは、いろいろいるみたいだが、「魅力のある人」はいなくなった、というのが大方の「エリート」の集まる職場の状況なのだ、とも言いたくなる。

社会が短期的な効率とか経済合理性みたいなものをことさらに取り上げていく現代では、余白の時間や空間は無駄で切り捨てるべきものとしか映らないだろう。アメリカの都市生活のますます貧しくなっていく様子は、その他の社会の未来を映し出しているとも言える。
ま、昔話の好きなオレみたいなジジイには、実によく通じる議論だな。
ちなみに、昨日は大田区立田園調布図書館で他にも面白い本を読んだのだが、それについてはまた後日。

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