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2017年7月14日 (金)

いやはや

暑くて爆発だあ。先週 渋谷文化村で ヴィスコンティ 1963年の作品『山猫』見た。あっという間の3時間だったね。思い返せば岩波ホールで同じくヴィスコンティの『家族の肖像』を見て、そのあと T教授のところに結婚の報告と新年の挨拶に出かけた辺りから今の僕の人生のパターンが決まったんだな。ヴィスコンティ映画とはなんか不思議な縁がある。といっても『イノセント』とか『ヴェニスに死す』とかこれと言って強い印象はない。『家族の肖像』はなんとも不思議な強い印象を残した作品だ。今回劇場で見た『山猫』は、シチリアの貴族が主人公で、なぜかバート・ランカスターが演じている。ヴィスコンティはランカスターのどこが気に入ったのか?何かLGBT的に受ける要素がバート・ランカスターにあるのか?映画の中でも風呂から出てきて何もきないで堂々としているところが出てくるので、なんか気になる。今回の作品の若い甥っ子、タンクレディ(変な名前?)を演じるアラン・ドロンも文句なしの美青年。そのお相手役のCC( クラウディア・カルディナーレ)のなんとも言えない危ういほどの若さ。完璧主義者ヴィスコンティの押し出しは本当にすごい。ガリバルディ隊の戦闘シーンなんかも大画面の隅から隅までみんな演技している。僕はこういうの大好きね。せっかく大画面でみるんだから隅から隅まで完璧であってほしい。昨今のコンピューターグラフィックスのお粗末な画面とは大違いだ。舞踏会のシーンもすごい。なんか説明読んだら、ヴィスコンティはほとんど自然光で撮るんだってね。舞踏会の場面もそうで、光量が足りない分はロウソクをたくさん焚いて撮ったんだって。どうりでみんな暑そうに扇子をパタパタやったり、アラン・ドロンも別に汗かく必要ない場面で汗かいてたりしたわけだ。昔の映画はでかいカメラで撮るから、画面の隅から隅までほとんど歪みが無いんだわ。
そしてシチリアの自然。街路を吹き抜ける強風と埃、広場から見下ろす地中海の風景、こうしたひとつひとつの個別の事物の在りようを実に丹念に写し取っている。映画のテーマそのものがシチリアの風土の中に形成された社会、その貴族をふくめた社会の変化なんだ。貴族社会の没落を描くというと、なんだかネガティブなイメージを持つ人が多いかも知れないけれど、全然違う。没落とは超ビューティフルなんだ。なぜならそれは「必然」なのだからね。変わるもの、変わらないもの、個人の勇気や創意工夫、時代の変化という時にはいろんなことが浮かび上がってくる。映画という芸術のジャンルは、「映画的な時間」という極めて特権的で特異な方法的実践を通じて、さきほどあげた歴史や社会の総体といったものを示すことができるのだ。先般見たエドワード・ヤンの作品もそうだった。

何であれ「出来事」は一回的なもので、ある場所である時代にある特定の人々のさまざまな連関の中で起こるのであって、そのどれ一つとして「一般的」なものには解消されない。それにもかかわらず「映画的な時間の流れ」は個別的なものを丁寧に描けば描くほど、まったく別の次元にある、歴史の「流れ」のようなものを描き出してしまう。実に不思議であり、かつ面白い。
僕はハリウッド映画のPC(政治的正しさ)が大嫌いだし、グローバル映画が描き出す「どこでも無い場所」が実にスカスカでみるに耐えない。東京ディズニーランドに行く感性がダメである。そういう意味では世界がグローバル化してしまった現在もう僕は生きる場所がないのである。しかし、50年以上前にイタリアで撮られた映画は、19世紀後半のシチリアを描いているだけなのだが、21世紀に生きている僕を興奮させてくれる。ヴィスコンティ作品というほとんど語り尽くされている感のあるものにいまさら何か言うまでも無い。けど少しだけ感想を入れるとすると、自身も貴族階級であるヴィスコンティの思い入れがちょっと「過剰」なんじゃないか?と鼻じらむようなところもあった。(映画のタイトルとなっている、山猫やレオーネに主人公が自らをなぞらえるセリフの所ね)。まあ原作どうりに撮ってるんだろうけどねえ。それからどうしても気になるのが監督のLGBT的な感性ね。ナチス親衛隊の「 ・・・ ナイフの夜」事件を描いた『地獄に堕ちた勇者ども』はまさにそうだし、『家族の肖像』も『ヴェニスに死す』もなんだか、独特のものがあるよね。この映画の中でのクラウディア・カルディナーレの美しさも何か純然たる「女性性」とは異なるような感じもするのだが・・。

それにしても、先般たまたま神保町でグラムシの本を見て以来、イタリアの Question Meridionale が くっついてきいているというのも不思議な流れだな。

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